<スポーツバイク言いたい放題>

916

ドゥカティ水冷スーパーバイクの歴史はとても複雑。 だから資料的な意味も含めてまとめてみました。

88年型 851Strada
スーパーバイク制覇を狙った、ドゥカティ初の水冷モデル。 102ps 2インジェクターを持つ4バルブデスモ。
日本車よりも10年早くインジェクションを使っていたのだから進んでる。
外観は今のドゥカティとは違った、昔のビモータのような3色イタリアンカラー。
形もボテッとしてて、ナックルガード、ミラー、ウインンカーが一体で横幅が広く、ダルマっぽい。
この初期型851はこの一機種のみで、高性能バージョンは無い。

その後、スタンダード(Strada ストラーダ=ストリート)の他に、高性能限定車のSPが併売されることになる。
ストラーダもSPも毎年変更され、更に名前と排気量が必ずしも一致しておらず、ラインナップはものすごく複雑になっていく。
89年型。 わずか1年で早くも外装、車体、エンジンの全てを変更。 105PS。
イタリアンレッド1色になり、ミラーが別体になったことで、随分現代的になった。 ウインカーの位置は初期型のなごり。
2インジェクターはSPに継承されて、ストラーダは1インジェクターへと簡略化。

SPと名のつく高性能の限定車はとても複雑。
851SP1 は市販レーサーだから事実上SPは90年のSP2が最初。
851SP2 は排気量と名前が違って888cc。 91年には 851SP3へと進化。
92年型 888 SP4
92年に 851は排気量アップして888ccになり、 同時に名前も888Stradaになる。

元々888ccだった851SP3は、名前と排気量が一致して 888SP4。
93年の 888SP5 で最終。

翌年には916がデビューしているから、Stradaが888ccだったのは1年だけということになる。
こちらが SP4と同じ年に追加された、888SPS。 これが851シリーズ最強とされている。
120ps、185kg。これはスタンダードよりも17kgも軽い。
当時の価格367万円也! スタンダードの888が239万というのも高いが、SPSは別格だ。
94年型 916Strada
ビモータを起こし、カジバに移籍してきた天才マッシモ・タンブリーニの作品。
この衝撃的なデザインには驚いた。 今までバイクに使われることが無かった「セクシー」という言葉で世界中が賞賛した。

あまりに従来型と違いすぎて、ドカらしくないとさえ思ったが、妖艶な魔力にどんどんハマって行った。
114PS。
ベターっとつぶれた頭。 切れ長の目。 こんな異様な雰囲気を放つ悪そうな顔はそれまで無かった。
ロービームではプロジェクターだけが点灯する。
当時日本では左右非対称のライトは認可されておらず、国内モデルに片目のバイクは存在しなかった。
だからこれが片目だけを光らせて迫ってくる姿も十分異様だった。
後姿もシャープでいい。 それまでの851とは全く違う、Vツインのメリットを最大限に生かしたスリムさ。
センターアップマフラーは既にホンダNR750、ビモータDB2 があったが、
広く世に知らしめ、流行のきっかけになったのは916だったと思う。
排気管がどこを通っているのか視覚的に分かりやすいのもすごくいい。
95年には biposto(2人乗りという意味)が登場し、それ以降Stradaという名称は使われなくなった。
95−96年は スタンダードは2人乗り、SPが1人乗りとされていたが
97年からはスタンダードにmonoposto(1人乗り)とbipostoの両方がラインナップ。

限定車の方は97年の 916SPSから排気量が996ccになっている。
99年型 996
スタンダードの方も排気量が996ccになり、元々996ccだった限定車も996SPSという名前になった。
あーややこしい。

ちなみに自分は97年の996ccの916SPSに街中でちょっとだけ乗ったのだが、
強前傾と高いシート、やたら高いギヤで 発進の度に気を使って全然楽しくなかった。
でもいい印象が残らなかったのは当然。 このバイクで街中ちょい乗りというのは一番やってはいけないことだから。
01年型 996R
この年に限定車の名前はSPSからRに変わった。そして排気量は998cc。 135ps
このエンジンは排気量2cc拡大というわけではなく、ボア・ストロークの変更に伴って結果的に998ccになったに過ぎない。
そしてクランクケースもヘッドも全面的に維新された完全新設計エンジン。 このエンジンは”テスタストレッタ”と呼ばれる。
今までスタンダードが1インジェクター、SP仕様は2インジェクターだったが、この年から全て1インジェクターに統一。

エンジンがガラッと変わったわりには、見た目は大きく変わらないが、
アンダーカウルの分割が変わったのと、ダクトがなくなったために 下半分がスッキリした。
02年型 998R
02年には998Rという名前に変わって排気量は999cc。
とにかくDUCATI水冷4バルブのSP仕様は 名前と排気量がほとんど一致して無いからややこしい。

驚くのが、前年に完全新設計されてショートストローク化されたのに、ここでまたまた思いっきりショートストロークにされて
その結果としての999cc。 テスタストレッタ第2世代。 139ps。

スタンダードの方も998という名前になって、排気量も998cc。 前年のテスタストレッタエンジンを得る。
つまりスタンダードの方はいつでも名前と排気量が一致している事になる。
03年公開の映画「マトリックス・リローデッド」に登場したものと同じ色の998が発売された。
映画での2人乗りのシーンに合わせて もちろんbiposto(2人乗り仕様)がベース。
クライマックスの高速道路2人乗り逆走爆走シーンが印象的。
03年型 999
エンジンは第1世代テスタストレッタを積むので排気量は998cc。
まったくもう、998Rが999ccで 999が998ccって 一体どうゆうこと?...勘弁して欲しい。

これまでのシャープでセクシーなイメージから大きく変わって、丸くてかわいい感じになった。
ウォンバットとか、オーストラリアの小動物みたい。
この頃既にドゥカティはカジバの傘下を離れ、マッシモ・タンブリーニはカジバに残ったから、
全世界に絶賛された916をモデルチェンジする役目を負ったのはピエール・テルブランチ。
これはあまりに酷な仕事。 916が素晴らし過ぎたから。
イメージを引きずったら「オリジナリティが無い」と言われるだろうし、デザイナーとしてのプライドが許さないだろう。
でも全く新しいデザインで あの916を超えるものを生み出すなんて始めから無理。
それでもかなりいいもの作ったと思うから、賞賛していいと思う。

ただ、新しい作品に対する非難を集中的に浴びたのが この顔。 独創性はあるのだが...。
しかし個人的には、現車を見たら顔に対する不満は吹き飛んだ。 素晴らしい造形があちこちに見られたからだ。
タンク形状は結構衝撃だった。 タンクって楕円じゃなくてもいいんだ...って思った。
当たり前なんだけど、その当たり前をやられてしまった衝撃。
トップブリッジも市販車とは思えない極端な肉抜き。
跨る部分のスリムさもさすが。
シート形状も変わってる。後ろ上がりではなく、後端は包み込むような感じ。 タンクごと前後に動いて着座位置を変えられる。

この立体感は写真ではなかなか分からない部分。
自分はこのバイクをみてF1マシンをイメージした。 全く形が違うものなのに何故? こんな事は初めてだった。
こんな素晴らしい作品が198万で手に入るなんて...とさえ思った。

マフラーはかなり巨大化されて、ボテッとしていてカッコよくない。 でも騒音規制などで仕方ないのだろう。
04年型 999R
02年の第2世代のテスタストレッタ999ccを搭載。 139psも変わらず。
999で自分が一番嫌いだったのが 貧弱なスイングアーム。
今回それが力強いめっちゃカッコいいデザインになった。
05年型 999R
外車はあまりモデルチェンジしない印象があるが、ドゥカティスーパーバイクはめまぐるしく変わる。
テスタストレッタエンジンが第3世代になった。シリンダーヘッドを新設計してチタンバルブを採用、馬力はなんと150ps。

さんざん不評を買っていた顔に小変更があった。 ちょっとすっきりしたけど、うーんカッコイイのかなぁ。
スタンダードも新型の太いスイングアームになった。