<スポーツバイク言いたい放題>

TZR250

RZ250で2ストブームに火をつけたヤマハ。
その後の更なる競争激化のきっかけを作ったのもやっぱりヤマハTZRだった。

86年型 TZR250 (1KT)
RZに代わるヤマハのスーパースポーツが出る…市販レーサーTZと同時開発らしい…噂だけは耳に入っていた。
学校帰りのバス停。初めてトラックに積まれた2台のTZRを見た。
一瞬だったが、その後姿はすごくキレイでかっこよかった。雪も降ろうかという85年の10月か11月だったと記憶する。

業界は大騒ぎだった。どの雑誌も特集はTZR一色。1台のために50ページを裂いた雑誌もあった。
後に業界にインパクトを与えた他のどの車種もかなわない位の大騒ぎだった。
クランクケースリードバルブって何? あのブッ太いフレームはなんじゃ?ブレーキは巨大ディスクが1枚だけ!
見た目も派手!目立ち過ぎて上手くないと恥ずかしくて乗れない、でも実際はとても乗りやすいらしい…

性能も圧倒的で、NS250RもRG250γもKR250Sも、とても比較対照にはなりえなかった。
当時流行っていたアマチュアレースでもTZR一色。
外装デザインの新しさは、ナックルガードが別体になっているところと、YZR500イメージのテールカウルの膨らみ。
シート下にチャンバーが走っていないTZRにとってこの起伏は特に意味無いが、
その後テールカウルを膨らませるデザインはスポーツバイクのデザインの定番になった。
更にサイドカバーが途中で途切れていて、シートレールの一部を露出するデザインは
他社の全てのバイクデザインに影響を与えた。
タコメーターだけがホワイトパネルというのもかつて無かった。

87年にはTZR125も登場。
250は維持費的に厳しいからRZ125(写真上)を買おうと思っていた当時の自分にとって、
TZR125(写真下)の登場はかなりときめくものがあった。
性能的にも豪華装備も250に負けない!?
クランクケースリードバルブ単気筒、デルタボックスフレーム(ただしアルミではなくスチール製)

やはり125だけあってコストダウンされている部分も多くあって、
メーターやスイッチボックスはRZ125と共通で既に古いイメージ。リヤブレーキはドラム。
上に盛り上がったタンクはそのせいで細くなってしまい、迫力不足。
熱くなっていた気持ちが収まってきて冷静に比べてみると、RZの方がいいかもという部分も多くあった。

結局どちらも買うことは無かったのだが。
87年に登場したNSR250Rに、人気実力ともにトップの座を奪われた。
88年は更に激戦。NSRは更に進化、RGV−γ、KR−1というブランニューも登場する中、
88年型TZRは市販レーサーと同じ後方排気になると噂されていたが、地味なマイナーチェンジだけだった。

内容としては、ピストン、シリンダー、リードバルブ、ライジアルタイヤ。
外からはほとんど分からない、内容重視の変更。 うたい文句は「求めているのは変化ではない、進化だ」
しかしこれだけで急激に進化するライバルたちに対抗できるはずも無く、
新型の開発が間に合わず、つなぎとしてのマイナーチェンジだったのだろうと予想する。

さすがにこの年式のTZRはほとんどみない。
この頃になると、登場当時やたら派手に見えたデザインもすっかりおとなしいイメージ。
89年型 TZR250 (3MA)
89年にようやくフルモデルチェンジ。待望の後方排気。
外観のイメージは従来型を継承しながらも大胆に変身。なんとも下品なデザインを手に入れた。
市販車であるわきまえが無いというか、レーサーっぽい。
テールカウルの膨らみは今回は本物。中にチャンバーが収まる。
写真で見るより実車は更にインパクトが強く、下品なところが個人的には結構好き。

「ワークススピリッツ&テクノロジー。いま、そのすべてを手渡そう。」
このキャッチコピーはしびれるものがあった。
フレームが従来のデルタボックスとは全く違う、複雑な形状。
ここらあたりも、見た目の綺麗さよりも実質を取った、下品にすら見えるレーシーな部分。

後方排気は
・「キャブレターがエンジンの前にあるため、吸気温度が熱の影響を受けにくい」
・「排気は後ろに真っ直ぐ伸びるため、チャンバーの設計自由度が増す」
と理論的にはいい事だらけなのだが、実際は性能が安定せず、調子が悪い車両も多くあったと聞く。
かつてない特殊なレイアウトのため、データも少なく、開発には苦戦したのでは無いか。

期待されていた88年よりも1年遅れの登場になったのは、その辺をまとめ上げるのに手間取ったせいではないか?
今となっては89年の登場も、「これ以上遅らせるわけにはいかない」 という見切り発車だったのではないかと意地悪い見方をしてしまう。

レーサーに近い革新の構成だったにもかかわらず、人気はいまひとつ上がらず、NSRに差をつけられた。
2ストロークメーカーとして、RZ、TZR初期型という歴史に残る名車を生んだヤマハだったが、
その後NSRに勝つことは出来なかった。
この年式の失敗が最後の最後まで尾を引いたと思われる。
90年にマイナーチェンジ。
大きな変更点は倒立フォーク。
レーサーイメージを追わない人を狙ったと思われる新しい色にも挑戦しているが、
この色は絶対に売れない、YAMAHAは何を考えてるんだ?と思った。 事実この色は走っているところを滅多に見ない。

RZ〜TZR初期型で優位を保っていたヤマハも後方排気の失敗で完全にホンダに地位を奪われ、影響は最後まで残った。
91年型 TZR250R (3XV)
そして91年型。自分がヤマハデザインの傑作のひとつに数える型式名3XV。

後方排気は2年で終了。ヤマハは2ストの長い歴史を並列エンジンで頑張ってきたが、ついにV型。
他社と足並みが揃った。技術を追求すると結局同じようなところに落ち着いてしまうのかとちょっと寂しかった。

マフラーは左右非対称。
これは当然違う場所から排気している前後シリンダーのチャンバー容積をそろえた結果で、90年のNSRも同様。
への字スイングアームも90年のNSR、RGV−γが採用している。
それらの装備といい、V型エンジンといい、他車に遅れを取っての採用なので、メカ的に目新しさは無い。
フロントエンドとテールエンドのこのエッジを見よ。
どこからこのデザインが出てきたんだろう。この微妙な角度のえぐれは絶妙としか言いようが無い。
かっこいい…。 おそらく空力的には意味は無いと思われるが…

テールランプの上にはエアスクープがある。 これもシート下にマフラーがあるYZR500の名残だと思う。

機能最優先のデザインだった89年から一転。とても洗練されていると思う。
ただ、2ストレプリカとしては上品過ぎたか?
真横からのシルエットも、89年の下品さからは考えられないほど上品でバランスが取れている。
ちなみに、またがった時のポジションはヤマハが最もコンパクトで、走り出すと自分の膝を握って走っているかのようだった。

TZRはその後、小変更があったり、SP、RS、SPRなどのバリエーションを生みつつも、基本的にはこの3XVが最終となる。