<スポーツバイク言いたい放題>

GSX−R750

GSX−R750には大きく3つの時代がある。
85年から91年までの油冷時代。
92年から95年までの水冷初期。
96年以降の現行期。
ここではGSX−Rが本来のレーシングポテンシャルを取り戻した96年以降を取り上げる。

96年型GSX−R750

現代のGSX−Rの直接のルーツとなる96年型750。
初代GSX−R750(85年)は徹底的な軽量化によって179kgという当時としては常識はずれな軽さを実現したが、
その後モデルチェンジの度に重くなっていき、油冷最終の91年、水冷初期の92年では208kgにまで肥大化していた。
レースの世界でも圧倒的な強さを誇った油冷初期の面影はすっかりなくなっていた。
96年のフルモデルチェンジでSUZUKIが目指したことは、初期型と同じ重量。
どんどんパワーアップし、タイヤもグリップ力を増し、それに伴って車体もどんどん高剛性化していたから
昔の重量に戻すのは大変な作業だっただろう。
これの実現のため重要だったのはエンジンのコンパクト化と軽量化。
そのためSUZUKIは3分割クランクケースを採用した。
後のYZF−R1を筆頭に、超軽量コンパクトエンジンが次々登場するが、火をつけたのはGSX−R750だった。
そうして初心に帰ったGSX−R750は128ps + 179kgを引っさげて登場した。
顔は伝統の丸目2灯を継承しつつもワンレンズの中にコンパクトにまとめられ、ラムエアダクトが大きく口を開ける、
かっこいい顔になったと思う。このデザインはかなり好き。

びっくりしたのはシングルシートカウル。デカイ!はじめは誰もが違和感を感じていた。ケツがデカ過ぎ。
でも慣れてしまうとレーサーライクで逆によく見えてきた。

1年遅れでGSX−R初の600ccも登場。 750をベースとしてフロントフォークを正立に変更。
パンチングパネルのようなグラフィックをあしらった、かつて無いカラーリングにも挑戦している。
油冷時代は750から1年遅れで1100も同様のモデルチェンジが行われていた。
96年の750を見て、翌年同じような1100が登場することを期待した人は多かったと思う。
しかし、1100は古い設計のまま継続され、噂に上がった「GSX−R1300」は隼というハイスピードツアラーとして登場し、
SUZUKIからリッターレプリカの火は消えたかに見えた。レプリカ好きは相当やきもきさせられたようだ。

コレに乗って、そのデキの良さに感動し、同時に乗った水冷1100が一昔前のバイクであることをひしひしと感じた。
「コイツが8耐で優勝するところを観にいこう!」と、この年の夏、鈴鹿に行った。
98年型でインジェクションを採用した。 これにより7ps!もアップして135psになった。
ちなみに96年から99年までの750は国内仕様も存在し、96〜97のキャブモデルは100万円を切っていた。
当時750クラスはスーパーバイクレースのカテゴリー以外に存在価値は薄くなっており、
他社は何百万もするレース専用の少数限定モデルで対応していたから、
一般市販車としての立場をわきまえた750レプリカは唯一だった。
00年型GSX−R750
リッターバイクが一般的になってしまった90年代後半、750はレースのためだけの排気量になっていた。
そんな中で 既に十分すぎる性能を持ち、レースでも好成績を収めていたGSX−R750が
00年にフルモデルチェンジするとは誰が予想しただろうか。
向上したスペックは141ps + 166kg! 96年型で驚いていたのが恥ずかしくなるくらいのジャンプアップ。
141psってあなた...完全にリッターバイクをカモる馬力ですよ。
ボリュームがあったカウル類はスリムにすっきりした。
横からのシルエットを見比べるとその差は歴然で、丸っこいイメージから一変、そっけないほどに軽い印象となった。
話題をさらったシングルシートカウルも極普通になった。
そしてついに伝統の丸目2灯を捨て、逆三角形のワンレンズの中に、異型ダブルヘッドライトが納まる。

例によって1年遅れで600もモデルチェンジした。 600のフロントフォークは依然として正立フォーク。
04年型GSX−R750
いやーびっくりした。GSX−R750のモデルチェンジ。
2000年型が出たときもスズキはすごいなと思ったが、またスズキはやってくれた。
750が活躍していたレースカテゴリーが次々と1000に移行してしまい、
750という排気量の存在意義がなくなってしまった今、あえて新型をリリースしてきた。
スズキのGSX−R750に対する思いは想像を遥かに超えるくらい熱いものだったのだ。

思えば2サイクルが無くなることが確定していた97年にスズキはあえて完全新設計のRGV−γ250をリリースした。
なんというメーカーなんだろう、スズキは...。
環境や周りの流れに関係なくやりたいことをやる。これほど男らしいメーカーが他にあるだろうか。
レーサーレプリカというジャンルはRG250γでスズキが作り出した。
そしてビックバイクにおける記念すべき最初のレプリカもやはりスズキ。GSX−R750だった。

レーサーレプリカはスズキの最も得意とする分野であり、先駆者としての誇りを持っている。
それゆえ並々ならね情熱が注がれているのだ。

96年の軽量なバイクとは思えないボリューム感から、00年は随分とスッキリしたがどこかそっけないものがあった。
04年型のシルエットは鋭さと速さ感のある非常に完成度の高いものとなった。

この新しい顔。どこか「ザク」っぽい。 すごくかっこいい。 そして他では見られない個性がある。
ハヤブサから始まり03のR1000に継承されてスズキのアイデンティティとなった縦目2灯はここに来て一つの完成を見た。

縦目2灯というのはどこか間延びした顔つきになってしまいがちだが、これは非常にうまいデザイン処理がされている。
低い位置に構えたハヤブサ的なプロジェクターライトの上にややツリ目の薄い横型ライトをセット。
速さ感とイカツイ悪っぽいさを併せ持つ、迫力があるすごくいい顔だ。
YZF−R1はツリ目2灯で新たな顔を作り出したが、他社も追従したため、もはや見飽きたほど普通になってしまった。
スズキは自分達だけの個性的な顔を手に入れた。
自分はこの一台を両手放しで賞賛する。
彼らにとってGSX−R750はひとつのジャンルなのだ。
ある意味GSX−R1000よりも重要な存在に違いない。
今この時代に750のレーサーレプリカが必要なのかという議論は彼らには無意味だ。
彼らは 「750のレーサーレプリカ」 を造ったのではない。 「GSX−R750」 を造ったのだ。
06年型GSX−R750
いまや600ccクラスは2年ごとにモデルチェンジするのが当たり前の激戦区になった。
GSX−R600も大掛かりなモデルチェンジをし、750も同時リリースした。
最初に目を引いたのはマフラー。 GSX−R1000の超ショートマフラーの考え方を更に推し進めたものだ。
1000の時は中途半端な短さで決してカッコ良くはなかったが、まぁどうせ交換するからいいかって感じだった。
今回のマフラーは完全に車体と一体になって溶け込んでいる。
交換するとしても同じ形状のものにしたいくらい、素晴らしい出来栄えだ。
これほど違和感無く、車体の一部になりきったマフラーがあっただろうか。 
全体のシルエットの 「まとまり感」 は飛びぬけている。
これは94年のDUCATI916で採用されたセンターアップマフラー以来のデザイン革命と言える。

特筆すべきはマフラーだけじゃない。 これほど有機的なシルエットを持つバイクは数少ない。
時間をかけてじっくりディテールを観察したくなる。
04年型の真横写真と見比べて欲しい。
比べてみると 04年型は非常に「バイクらしい」シルエットだ。
対して06年型は有機的。 工業デザインの域を飛び出して、命を吹き込まれた「生命体」のようだ。

こうして見ると、今までバイクにとって マフラーが如何に全体のまとまりの邪魔をしていたかが思い知らされる。
センターアップも同じようにマフラーがフォルムに溶け込んではいるが、テール周りのスッキリ度がGSX−Rとは大きく違う。

他社がどれもツリ目2灯、センターアップマフラー、と同じフォーマットを採用する中、
スズキは完全に独自の道を歩み、スズキらしさを確立している。
日本のメーカーにはこういう姿勢が必要なのだ!

ただし今回の顔は少々ギミックなデザインが入ってきて子供っぽい。 04の方が遥かにかっこよかった。
テールランプも前作の方が好き。

05年のGSX−R1000で試みられた、2枚のパネルを立体的に重ねるカウルデザイン。
1000よりも形状は更に進化している。 複雑で非常に凝っているニクい造形だ。

下の写真は左が04年、右が06年のホイール。 キャストスポークの驚異的な細さを見よ。
間違ってはいけない。 04だって十分すぎるほど細かったのだ...。 ただ06の細さが異常なのだ...。

ハヤブサのところでも言ったが、スズキはタンデムシートのデザインがどうしてもヘタだ。
ほとんどの人がシングルシートで乗ると考えているのだろうが、それにしたってもっとウマいまとめかたがあるだろう。
上は04、下が06。 まずはエンジンに注目。
クランク(小さな円)に対して クラッチハウジング(大きな円)の位置が全然違う事が分かる。
96年に大幅にコンパクト化されたエンジンだが、今回の変更でYZF−R1と同様のレイアウトとし、さらにコンパクトに。
前後長はなんと5cmも縮まっている。
(YZF−R1のエンジンを見てもらうと分かるが、クラッチが異常に高い位置にある)

750のエンジンはバランサーを持ち、600には無い という違いが与えられた。
600はレース寄り、750はストリートを意識しているのが分かる。

フレームは押し出し材から鋳造材に変更。 曲面で構成されている
売れるものを作って沢山売るのが商売なのに、いまや最も売れない排気量に何故これほど力を入れるのか。
以前は750があってスケールダウン版として600が存在したのだが、今は立場が逆転して600があって750がある。
そうだとしても、750をリリースする自体が他のメーカーではありえないことだ。

これほど市場調査と無関係のバイクが存在するだろうか。
これはスズキのエンジニア達の思い入れ以外の何者でもない。
GSX−R750は 「作り手のこだわりだけで存在する唯一のバイク」 と言っていい。