XJR1200

XJR1200はスクープ段階のときから気になっていた。
GSX−R1100の前傾姿勢がキツくて、楽なバイクが欲しくなっていた頃だ。
低速を重視したトルク型エンジン、日常域で扱いやすいポジション、
雑誌の記事を読めば読むほど自分にぴったりのバイクに思えてきた。
カスタムに興味が出てきた自分にとって素材的にもいい。

400には無いシルバー単色というカラーもインパクトがあり、ヤラれた。
当時シルバー単色のバイクというのはとても少なくて、このXJRと、同じ年にデビューしたHONDA V−Twinマグナくらいだった。
決して大きさを誇示するのでは無く、引き締まった筋肉のように抑揚のあるデザインにこのシルバーはとても良く似合っていた。

95年。 YSP札幌西からTEL。 94年初期型のXJR1200を安く出すからどうかという内容だった。
欲しかったXJR。 この一本の電話で購入を現実問題として真剣に考え始めた。
在庫はブラック2台、シルバー1台。 買うならシルバー。チャンスは残り一台。

でも優柔不断の自分はスグに答えが出せず、毎日考え込んだ。
店が休みの日に行って、外からショールームの中を眺めていた事もあった

この写真は展示中の車両を撮影させてもらったもの。一番右が自分の愛車になるもの。中央は黒、左は400。
こちらは契約の際に記念にもらってきた値段札。
実はこれが自分にとって初めての新車。

カスタムに興味が出てきた自分はカスタムリストを製作。
距離が変わるのがイヤなので、まずは納車される前に260km/hメーター&リミッターカットを装着してもらった。
XJRのいいところはネイキッドにしては珍しく過去の亡霊を追いかけていないこと。
名前こそXJだが、デザイン的には何物にも縛られず、現代のネイキッド像を見事に造りあげている。
耐久レーサーYZFからヒントを得たと思われるテールランプや、サイドカバー形状も明らかにレトロ路線とは違う。
この角度がかっこいい。

ヤマハのいいところは一つ一つのパーツが美しく、それがまとまった全体のフォルムも完成されている事。
タンクは絶品。傑作。 引き締まった筋肉のよう。
ヤマハは他社には真似できない微妙なラインの使い方をする。
1300になってもタンクだけは変わらなかったことからも完成度の高さが分かる。
CBにはCBR、ZRXにはZZR、GSFにはGSXR、と、全てのネイキッドバイクにはベースとなるフルパワー車がある。
その中でカムが変わっていないのはXJRだけ。つまり吸排気系だけでフルパワーになる。
低速トルクは素晴らしかった。
あふれるようなとはこのことで、極端に言うと右手をひねる直前からダッシュをはじめるような感じ。
それだけレスポンスがイイということ。でも過敏じゃない。
サーキット体験走行会。
200km/hでホームストレートを駆け抜ける。
ネイキッドの200km/hはツライ。風圧でヘルメットが顔面にくっついてくる。 カウル付の人達は全然余裕だったらしい。
でもサーキットは楽しい。のびのび走れる。これに比べたら峠は恐ろしい場所だ。
雑感

デザイン的に手抜きが無い。ないがしろにされた部分がなく、見える部分は全てちゃんとデザインされている。
YAMAHAの素晴らしいところはパーツ単位だけでなく、それがまとまって一つの形になったときにもバランスがとれていること。
その点ではHONDAは機能優先で、機能に関係無いデザインにあまり熱心ではないような気がする。
SUZUKIはこのパーツが何故こういう形なのかというコンセプトがはっきりしていて筋が通っているのだがパッケージングが上手ではない。
Kawasakiは全体としてみるといいが、パーツの造形美を感じにくい。

XJRは現代のネイキッド、スタンダードバイクのひとつのリファレンスではないかと思う。
非常によくできたバイクだった。空冷エンジンもいいフィーリングだった。ちょっと優等生過ぎるかなというのもあったが。
バイクに乗っているということも忘れてしまいそうなほどの素直で自然なフィーリングは果たして長所か短所か。
XJR1200概要

ZEPHYR1100が売れ、CB1000SFが反撃に出ていた当時、
既にXJR400をヒットさせていたYAMAHAがFJ1200エンジンを搭載したXJR1200をリリースしたのは94年。
ZEPHYRがレトロイメージを強調し、CBが前衛的な巨大タンクと水冷エンジンを前面に押し出していた中、
XJRがスタンダードバイク路線を打ち出すのには都合がいい環境がそろっていたといえるかもしれない。
XJというブランドはZやCBほど伝説が無いためデザイン的に過去の亡霊にとらわれなくていい分、現代的なかっこよさを表現できた。
一部のマニア向け商品ではなく、デザイン、性能、車格、全てにおいて大多数に受け入れられる造りのXJR1200はベストセラーとなった。
その後98年にはメッキシリンダー採用の1300にマイナーチェンジ。
排気量を拡大しながら2kgの軽量化、デザインイメージを変えない良心的な造りで優位は揺るぎ無いと思いきや、フルチェンジしたCB1300SFに王座を奪われた。
そして2000年。相変わらずデザインイメージは大きく変えなかったものの、大幅に軽量化してフルモデルチェンジ。再びベストセラーに輝く。
XJR1200−1300の歴史を見ていくとキープコンセプトという言葉が浮かぶ。
CBのように途中で方向性を変えるのでもなく、かといってZEPHYRのように何も変わらないのでもなく、
変化していながら初期のコンセプトはしっかり受け継いでいる。
XJRはいまや販売面でもイメージ的にもYAMAHAを代表する看板バイクになった。
諸元
型式
全長
ホイールベース
シート高
乾燥重量
最高出力
最大トルク
タンク容量
Fタイヤ
Rタイヤ
4KG
2,170mm
1,500mm
790mm
232kg
97ps/8,000rpm
9.3kg-m/6,000rpm
21L
130/70−17
170/60−17
カタログより
「ビックバイクは経験を積んできたライダー達の聖域」と謳われている。
これはもう現在では通用しない言葉になってしまった。
94年(初期型)のカタログは全てスタジオ写真が使われている。
その後の改良型から1300にいたるまで、
カタログには走行写真がほとんど使われていないようだ。
これは静かな力強さを強調するイメージ戦略だろう。
単色の背景も造形美を見せるための手法なのかもしれない。
確かに99年までのXJRには落ち着いた大人のバイクというイメージが漂う。
00年からは少し若者向けにシフトした感があるが、
依然として通好みの造りこみを感じさせる。