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「憲法9条を世界遺産に」 太田光 中沢新一 「美しい国へ」 安倍晋三 爆笑問題の太田光の発言がきっかけで 憲法9条の事を真面目に考えてみた。 彼の言葉に感動した自分は、憲法改正反対の太田光と、改正推進派の安倍首相の本を両方読んでみようと思った。 |
| (’06/11) とてもよく売れているらしい2冊だが、正直特別な感動を得る事は出来なかった。 まず対談だが、同じ考えを持つ2人の対談というのは何か同じ事の繰り返しに聞こえる。 単純に表現の仕方が違うだけで。 違う考えの2人がやりあう方が理解できるんだろうね。 首相の話も何故か心に入ってこなかった。 教育改革とか年金の話はまぁ良かったけど、憲法改正に関してはあまり納得できなかった。 もっと勉強してから読み直せばまた違った感想になると思うんだけど。 ★★ |
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「カードミステリー 失われた魔法の島」 ヨースタイン・ゴルデル 日本語に訳されたのは96年。 「ソフィーの世界」以来ヨースタイン・ゴルデルにハマッて 本屋に行く度に彼の作品を探して買いあさった。 多分日本語に訳された彼の作品のほとんどを読んだと思う。 その中で一番面白かった記憶があるので今回10年ぶりに再読。 彼の作品の大半を読破した後は、他の外国文学に手を出したが、ことごとくダメだった。 それ以降外国文学はほとんど読んでない。 |
| (’06/10) トマスは父親と一緒に、疾走した母を探しにアテネへ車での旅に出た。 途中不思議なルーペと豆本を手に入れた。 その中にはトランプのマークをつけた不思議な小人達の島の物語が書かれていた。 そして何故かその話は 父親とのこの旅を暗示するような内容だった。 ヨースタイン・ゴルデルは元々哲学の先生で、哲学を誰にでも分かりやすく伝えたいという思いを作品で表現している。 彼の作品はどれも、複数のストーリーが同時に進行する特徴がある。 だから複雑でこんがらかる。 ここでは親子の旅と豆本の中の話が同時に進行する。 暗号のような不思議な言葉が次々出てくるトランプ島でのストーリーは不思議で独特な「ヨースタイン・ゴルデル・ワールド」。 ★★★★ |
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「ZOO 2」 乙一 乙一作品4冊目。 短編全6編 |
| (’06/10) 「Closet」 ミキは旦那の弟に過去の秘密を握られた。誰にも知られたくない過去だった。 数分後、後頭部から血を流す義弟の姿があった。 ミキは急いで死体を隠した...。 読みはじめから文章の中に、誰の視点で書かれているのか分からない違和感を感じていた。 でもそれすらも、乙一が読者に仕掛けたトリックだった。 やられた。驚いた。みごとだ。 「ソフィーの世界」以来の衝撃だった。 相変わらず素晴らしい視点を持ってる人だと思う。 それ以外の作品は残念ながらもう一つ心に残らなかった。 不思議で奇抜で想像も付かないシチュエーションを描く所は相変わらず冴え渡っているのだけど、サイコホラーなんだよな。 不思議と自分が読む乙一作品は順を追ってホラー色が強くなっていく。 どうやら乙一は自分が思っていたよりも遥かにサイコ寄りの人だったようだ。 ★★ |
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「ZOO 1」 乙一 乙一作品3冊目。 乙一の短編集の中からオムニバス形式で映画化された5編。 |
| (’06/9) 「カザリとヨーコ」 ママが私を殺すとしたらどんな方法で殺すだろうか。ママは双子の妹カザリを溺愛するけど私には食事も作ってくれない。おなかが空いてつまみ食いしようものなら後ろから灰皿で殴られる。 そんな時食べ残しをくれるカザリが天使に見える。私はこの大切な妹を守るためなら人殺しだってするかもしれない。 「So−Far そ・ふぁー」 それがいつの間に起こったのかわからない。 不幸な交通事故で、母は父さんが死んだと話し、父は母さんが死んだと話す。 でもぼくには両方が見えるし、両方と話せる。 どっちが本当? 「ねぇここにいるよ」って言っても二人とも「かわいそうに」って僕の頭をなでるだけ。 「陽だまりの詩」 私は目をあけた。台に寝ていた。傍らに椅子に座った男がいる。「あなたは誰ですか?」 「君を作った人間だ...誕生おめでとう」 他2編。 「陽だまりの詩」は素晴らしい作品。 泣きそうだった。 どうやら自分は動物が出てくる話に弱いらしい。 相当ヤバかった。 ここに紹介しなかった2編はミステリーを飛び越えてホラーだった。 かなりおぞましい内容の話だった。 全5編のうち、3つが素晴らしく良くて、2つは極端におぞましかった。 乙一は本当に才能に溢れていると思う。 奇抜な視点で 想像もつかないようなシチュエーションを描く。 ★★★★ |
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「暗いところで待ち合わせ」 乙一 乙一作品2冊目。 前回の短編集「失はれる物語」のデキが非常に良かったため、今度は長編を読んでみようかなと。 |
| (’06/9) 視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。犯人として追われるアキヒロはミチルの家に逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは身を守るために気付かないフリをする。 奇妙な同棲生活が始まった。 いかにも面白そうな設定でしょ。でもちょっと無難に綺麗にまとまりすぎたかな。 この作品は映画化されて秋に公開されるらしい。 確かに映画にするにはいいまとまりかもしれない。 原作と映画と中身が変わっちゃうことってあるけど、やっぱり映画と小説でそれぞれに適した展開、まとまりってあるんだろうな。 で、この作品はやっぱり映画的。 小説としては、特に自分が乙一に期待した小説としてはちょっとインパクトが薄かった。 ★★★ |
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「愛がなんだ」 角田光代 OLのテルコはマモちゃんからの電話があれば仕事中でも長話、誘われればさっさと退社、全てがマモちゃん優先で会社もクビになる寸前。 だが彼はテルコのことが好きじゃない。 |
| (’06/8) 彼に出会って世界は綺麗に二分した。「好きなこと」と「どうでもいいこと」。マモちゃんに買い物を頼まれれば仕事をすっっぽかして買出しに行く。誰もが「やめときなよ、あんな俺様男」という。 ある時は毎日のように電話が来て、休みの日には仲良く手を繋いで出かける。 ある時は電話をことごとく無視して3ヶ月も連絡が出来ない。 私は一体何をした?彼の機嫌を損ねる何を。 角田光代作品にはいろんな種類のダメ人間が登場する。 今回は超身勝手な男にのめり込みすぎて仕事をクビになる女。 果たして正しいのは、自分の感情なのか、冷静な他人の声なのか。 誰かに夢中になるのは美しい事のようで、残酷で恐ろしいことでもあると示唆する。 角田光代作品としては珍しく小説らしい終わり方だった。 あー良かった。 でも非常に静かで恐ろしささえ感じるエンディングではあったのだが。 ★★★ |
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「眠れるラプンツェル」 山本文緒 文庫本 山本文緒作品6冊目 ラプンツェルとはグリム童話に出てくる、塔に閉じ込められた女の子の名前。 |
| (’06/8) 昨日もヒマだった。明日もヒマだろう。結婚6年目。滅多に帰ってこない夫が猫を連れてきた。このマンションはペット禁止。どうするのコレ。 隣に住む中学1年生の男の子は学校をさぼってウチに遊びに来るようになった。そのうち彼の父つまり隣の旦那も仕事をさぼってウチに遊びに来るようになった。 この奇妙な人間関係、そしてマンションの住人に猫を飼ってる事がバレ始めた事で、徐々に私の周りに波風が立ってきた。 山本文緒作品はつい夢中になってしまう。ほんのりと幸せな日常の描写、愛すべき登場人物(と猫)、微妙でほんの少し病的な感情の揺れ、そして忘れた頃に刺さってくるミステリー。 ダークで、幸せで、恐ろしくて、切ない、恋心と狂気。 彼女の作品はどれも、決して凶悪というわけではない誰もが持っているであろう心の闇の部分を描いている。 そういう意味でこれも非常に彼女らしい見事な作品。 ★★★★★ |
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「失はれる物語」 乙一 文庫本 短編集 ハードカバーの表紙は何度か見かけていて気にはなっていた。 でも奇抜な人目を引く表紙は中身がイマイチのような気がしてなんとなく避けていた。 地下鉄の車内広告で、文庫本化と同時に新たに2編収録とあり、これはお得と思って買った。廉価版である文庫本に特典が付くなんて珍しい。 |
| (’06/8) 「Calling You」 クラスのみんなが持ってる携帯電話を私は持ってない。本当は私だって持ちたいと思ってる。でも持たない。かける相手もかけてくれる人もいない事が分かっているから。 心の中で携帯をイメージしてみる。色は白がいい。触った感じはつるつるがいい...。そのイメージは日に日にリアルになり、心の中の携帯の時計で正確な時刻が分かるまでになってた。 朝起きて携帯が無くてあわてて探した。そしてそんな自分にビックリした。始めからそんなものは存在しないのに...。 ある日呼び出し音がなった。どこから?心の中の携帯からだ。 「失はれる物語」 最後に見たものは突っ込んでくるトラック。それから私の周囲は闇となった。体が動かせない。感覚が無い。皮膚があるのかさえ分からない。唯一右腕だけしびれる感覚がある。 何かが右腕に触る。柔らかくて暖かい。きっとこれは妻の手だ。私の手を取って頬に当ててるのが分かる。その頬は濡れている。それから妻は毎日私の腕に文字を書き、状況を知らせて くれる。何年も。毎日。 妻は若くて美しい。動かなくなった夫に縛られていてはダメだ。私を捨てて欲しい。何度死にたいと思ったことか。そして私は自殺する方法を思いついた。 「傷」 俺はプール学習の時に 昔親父につけられた背中のアザをバカにされて、デッキブラシでそいつを殴った。鼻血を出して泣いて謝るそいつを殴り続けた。そのせいで俺は特殊学級に 入る事が決まった。 そこアサトがいた。アサトも家に帰るのが嫌なのか、いつも遅くまでクラスに残っていた。 俺たちは仲良くなった。 ある時俺はアサトの不思議な力を知った。 「手を握る泥棒の物語」 俺がデザインした時計が生産計画中止となった。理由は友人と二人で経営するこの会社の資金不足だ。200万あればなんとか...俺は叔母のバックに入っていた札束を思い出した 「しあわせは子猫のかたち」 一人暮らしを決めたのは誰にも干渉されずに生活したかったからだ。 前に住んでいた雪村という女性は死んでしまったらしい。 陽の光は嫌いだから日中でもカーテンを閉める。 でも目を放した隙にカーテンが開いている。 どうやらそれは雪村の仕業であると分かってきた。 彼女は洗濯もするしコーヒーもいれてくれる。 時々トラップもかけてくる。 靴の紐が硬結びにされていたり、カップラーメンを作っている時に箸を全部隠されて「早く箸を見つけないと麺がのびてしまう!」というせこい窮地に立たされた。 「マリアの指」 上級生のマリアが自殺した。 陸橋から飛び降りて電車にはねられ、バラバラになったらしい。彼女の血はかなり広い範囲に飛び散った。 彼女の同級生のある男は それから毎日夜になると線路に入り懐中電灯を持って歩き回るようになった。 集められた体のパーツの中に指が一本無かったので探しているという。僕も探すのを手伝う事にした。 でも僕はその指がどこにあるかを知っている。 指を捜すフリをしながら、僕は本当にマリアは自殺したんだろうかと疑問を感じ始めていた。 すごく良かった。 ミステリーあり、かわいらしくもあり、切なくもあり... 文句無くオススメの一冊。 彼の作品は是非他にも読もうと思う。 ★★★★★ |
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「菊葉荘の幽霊たち」 角田光代 「恋人、吉元の家探しを手伝い始めた私。 毎日あてずっぽうの駅で降りて、町をほっつきあるいて色んなアパートを見て歩いた。 ある日、吉元が理想とする木造アパートを見つけたがあいにく満室。 二人は住人の誰かを追い出そうと考えた。」 |
| (’06/7) 菊葉荘から赤いスタジャン男が出てきた。ついていくとそこは大学だった。私はキャンパスで1日中赤いスタジャンを追い続けた。学食に入り、彼を含む数名の輪に近づいた。 一人の女が「ねぇ、行く?」と言った時に私は「行く行く!」と輪に加わった。 居酒屋からの帰り、電車がなくなった事を理由に赤スタジャンの部屋に泊めてもらった。 畳が見えないほどあふれるモノに囲まれた布団の中で 体をまさぐられながら私は言った。「ねぇ、引っ越したらいいと思うんだけど」 狭い汚いアパートは角田光代の作品に頻繁に出てくる得意なシチュエーション。 変わった住人達と、彼らにおかしな追い出し工作をする2人。95%は面白い流れで話が進むのだが、 残り5%で違った展開をしそこでスパッと終わる。 「エコノミカル・パレス」も同じような唐突な終わり方。 これをやられると今までの95%は何だったの?と思う。惜しいなぁ。 ★★★ |
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「別れの後の静かな午後」 大崎善生 「戻る事の出来ない日々を思い出し、必死に手にかき集めても、結局は虚ろな寂しさが残されるだけなのである。 重いではどんなに懸命に組み合わせて行っても、一枚のパズルには仕上がらない」 |
| (’06/7) 「ディスカスの記憶」 知らない女性から突然電話が来た。会って聞きたい事があると。何を?と聞いても今は言えないという。 会うと彼女は僕が5年前まで住んでいたマンションの事を聞いてきた。 僕はそのマンションでディスカスを飼っていた。 生かしていく事自体が非常に難しい熱帯魚で、繁殖させるのは奇跡に近い種だ。 それがある日突然産卵を始めたのだった。 その時の記憶と記録が彼女が失った姉の無念を晴らす事になろうとは。 表題作をはじめ、様々な「別れ」をテーマにした短編6作品。 読み終わったあとはしみじみ来るのだが、何故か不思議と印象に残りづらい。 ★★ |
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「僕のパジャマでおやすみ」 山本文緒 文庫本 「バイト先のドーナツ屋でかわいい真冬をゲットしたほずみ君。ところが優柔不断な性格ゆえ まわりを巻き込んだドタバタがはじまる。どうする少年!」 山本文緒作品は何冊も読んでいるが、ちょっと異色なタイトルにひかれて買ってみた。 |
| (’06/7) ほずみは股一と一緒に道路工事のバイトをして 共同で400ccのバイク”GPZ”を買った。 次のバイト先はドーナツ屋。 そこで真冬を見て一目ぼれ。 ほずみと股一は 「先に真冬をゲットした方がGPZも自分のものにできる」 という賭けをした。 ほずみは真冬と付き合い始めるが、抜け駆けをしたような罪悪感で股一に言えない。 頻繁に部屋に遊びに来る幼なじみのリオコにも言い出せない。 そのうち真冬から「リオコって誰よ」と聞かれて微妙な関係を説明できず、誤解が膨らんでいく。 人間のダークな部分をテーマとすることが得意な山本文緒作品とは到底思えない、青春ドタバタコメディー。 読んでいるうちにこれは多分かなり初期の作品なのだろうと予想した。 予想通りこれは彼女の5作目で、重版あとがきでも、著者本人が言っている。「今現在の私が書くものは 人が見ないようにしているものをわざわざ広げて見せているようなものが多い。 一体どうしてしまったんだろう。こんな幸せな話も書けたはずだったのに」 と記している。 そして、未熟ながらも頑張っている自分の初期の作品にエールを送っている。 ★★ |
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「孤独か、それに等しいもの」 大崎善生 今日一日をかけて私は何を失ってゆくのだろう 傷ついた、心優しき人々に捧げる、再生と回復への祈りにあふれた奇跡の物語、全五編 |
| (’06/7) ・「八月の傾斜」 卒業が近づいた日に私は大久保君にキスをせがんだ。 彼は言った。「キスはね、高校生がするものだよ。だから高校に進学してからにしよう」 初めてキスしたのは高校1年の文化祭だった。 何度目かのキスの間、私が自分の下着の中に大久保君の指を招き入れようとした時、彼は言った。「それは大学生がすることだよ」 高校3年の9月、大久保君は一枚のメモをくれた。夜寝る前に読むようにと。 「勉強がんばれよ。大学に行ったら、干しぶどうの数くらいセックスをしよう。おやすみ」 ...結局私と大久保君がセックスすることはなかった。 彼が大学に進学しなかったからである... 大久保君が好きだった。どんなにぐちゃぐちゃに、壁にぶつけられたトマトのようになっていたとしても、遺されたどこかの肉片を抱きしめて慰めてあげたい。 ありがとうと言いたい。 他に表題作を含む全5編 今回の作品は主に人間の心の闇をテーマとしている。 どれも切ないストーリー。 どれだけの人が闇を抱えて生きてるのか。 きっと自分も含めて誰もがそうなんだろう。 ★★★ |
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「九月の四分の一」 大崎善生 逃れるようにしてたどり着いた場所で君と出会った。 失ったはずの大切なものを僕は取り戻し、君は曖昧な約束を残して、終われるように姿を消した... 失われたときの痛みとぬくもり 心の揺らぎを紡ぐ短編集 |
| (’06/7) ・「報われざるエリシオのために」 「私ね、武井君の論文を読んだ時に彼に恋をしたの。 ”チェスを考える事は哲学に似ている” でも5年も彼と暮らしていると段々分かってくる。彼がそんな事を考えるタイプの人じゃない って事を。 そしてそういえば彼のそばにいつもそんな事を考えている人がいたなぁって気付いた。 もしこの推論が当たっているとしたら私が恋したのはあなたってことになってしまうの」 ・「ケンジントンに捧げる花束」 編集部に一通のエアメールが届いた。イギリス人の老女からのものだった。「私の夫は先月その人生を終えました。日本名は吉田宗八といいます。彼の晩年の最大の楽しみが 貴誌「将棋ファン」でした。雑誌が届く日が近づくと郵便ポストの前にしゃがみこんで配達を待っていたものでした。」 僕はイギリスに飛び、一人の男の壮絶な人生の話を聞く事になる。 ・「悲しくて翼も無くて」 中島公園で痩せた女の子が生ギター一本でツェッペリンを歌っているのを聞いた。僕は彼女の桁外れの表現力に魅了された。 彼女はアマチュアバンドのボーカルとして有名になって いったが 25歳で歌うのをやめた。小さい頃に25歳まで生きられないと医者に宣告され、それまでは歌おうと決めていたと聞かされた。その後彼女は酒におぼれ、ウツに陥った。 ・「九月の四分の一」 小説家を志した僕は中学から大学までの10年を本を読む事に費やした。機は熟したと思い立った22歳の春、原稿用紙300枚を前にして何も書けない自分に愕然とした。 僕は就職したが4ヶ月でやめてしまい、ブリュッセルに飛んだ。そこで奈緒と出会った。6日間一緒に生活したが 彼女は「今度は九月四日で会いましょう」という手紙を残して消えた。 どの物語も 主人公は30代〜40代で、現在の生活と過去の思い出を対比させながら絶妙な表現方法でストーリー展開していく。 時々出てくる少々行き過ぎた性描写以外は、非常に綺麗な文章表現で、4編とも切ない内容になっている。 ★★★★ |
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「MOMENT」 本多孝好 文庫本 連作集 |
| (’06/7) 死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら...。 この病院には末期の患者の最後の願いをなんでもかなえてくれる「必殺仕事人」がいるらしいという噂がある。 でもその噂には間違いがある。 なんでも叶えるわけじゃない。 学生アルバイトの「僕」にもできる事とできない事がある。 中学生の美子ちゃんの願いは、修学旅行で一緒に写真を撮った大学生の男にまた会いたいというものだった。 「僕」はついに彼を突き止め、美子ちゃんに会わせるが、 美子ちゃんの望みは 「片思いの人との再会」 などではなく、 友人の死に対する復讐だった...。 「翌週、美子ちゃんは病院を移り、翌月に手術を受け、その4日後に死んだと聞いた。 僕は信じなかった。 いつかきっと美子ちゃんから手紙が届くだろう。そこには気になる男の子 の事なんかが書いてあって、それを読んだ僕はきっと それは良かったなんて思いながら、頭の片隅でその見も知らぬ男の子に嫉妬してみたりするんだろう。 僕はそう信じてる。」 末期患者の最後の願いを必死になってかなえてあげようとする清掃アルバイトの「僕」の物語。 4作品が連作になっている。 本多孝好作品らしく、少しのミステリーがちりばめられたストーリー展開。 ★★★★ |
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「ミルク」 大道 珠貴 「とりとめもない日々、なんでもないセックス」 「もう少女じゃいられない七つの物語 芥川賞作家の初の書き下ろし」 2年前に一度読んだものの再読。 著者が男なのか女なのかも不明。 不思議なタッチでまずまず面白かったと記憶している。 |
| (’06/5) 誘われるがままに軽薄なデートをする男が2、30人いて、教師にすらちょっかいを出されるほどのキリは肥満体でブザマなケイゴが好き。 ぶつかり合い、喧嘩のようなセックスが終わると仲直りした兄妹のように手を繋いでしがみつく。ありがとう、いえいえこちらこそ、安心するね二人でいると、そうだね、と言い合う。 ケイゴがまた「俺なんかよりイイ奴探せよ」なんて下手な言い訳して離れていった。 部屋に帰るとかあさんに電話してみた。不在。いて欲しいときにいない。それでこそ私の母さんだ、と大笑いしたくなる。 何か体から絞り出したい。でも泣くのに慣れてないから鼻水しか出ない。うずくまって眠る努力をする。今がキツイのだ。ここを通り過ぎれば。今を忘れるために眠るのだ。 しくしく泣くそぶりをしたら、自分がかわいそうだと思えていい気分なのだ。 今だけ泣いたつもりでいよう。 7つの短編に共通するのは主人公が ”冷めてるいまどきの女の子”で、そして終始一人称の日記調で語られている事。 これは好みがはっきり分かれる。 人によって、だけでなく、おそらく気分によって感じ方が全く変わる。 再読し終わった時、何故自分はこの本をわざわざ取って置いたのだ?と分からなくなった。 何も残らない。 全く面白くない。 でも更に3日後に、一編をもう一度読み返したら、なんだかいいなって思った。 不思議だ。 よくわからない。 でも多くの人の支持はきっと得られない。 ★★ |
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「女たちは二度遊ぶ」 吉田 修一 「本当に何もしない女だった。炊事、選択、掃除はおろか、こちらが注意しないと3日も風呂に入らないほどだった...」 「甘く、ときに苦く哀しい、”日本の美しい女たち” 11人の物語」 様々なタイプの11人の「女」を描く作品。 山本幸久「男は敵、女はもっと敵」 に近い面白さがあるかもしれないと期待して買ってみた。 |
| (’06/4) 「どしゃぶりの女」 彼女を部屋から追い出すために遠まわしに言った「雨が上がるまでいれば」。 この言葉がきっかけで付き合うことになろうとは。 雨はその日から三日半降り続いたのだ。 自分でコンビニにすら行かない彼女は、もし僕が帰らなかったら本当に何も食べずに待ち続けるのだろうか。 バイト先で寝て翌日昼に帰ったら、彼女はベッドの中から 「あたしを殺す気?」と僕をにらむ。 うれしかった。 コロッケパンを貪り食う彼女がたまらなく愛しかった。 今度は3日間。 僕は試してみた。 彼女はきっと待っていてくれる。 他に「平日公休の女」 「自己破産の女」 「泣かない女」など 11編。 短すぎるのかもしれない。 中身が浅いまま終わってしまうからどうしても印象に残らない。 でも山本文緒の「ブラックティー」のように印象深い短編集だってある。 これも月刊の大衆誌に掲載された作品を集めたもの。 所詮雑誌は捨てられる。 捨てられるものに掲載される作品には作者も魂はこめないのかもしれない。 そのような作品を1冊にまとめてハードカバーで装ったところで 中身が素晴らしくなるはずもない。 今後は雑誌掲載の短編集は買わないほうが良さそうだ。 ★ |
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「ボロボロになった人へ」 リリー・フランキー 「これほど誠実でありながら、刺激的かつ魅力的で、笑え、感動できていいのだろうか!?」 「リリー・フランキーがその才能を遺憾なく発揮したはじめての小説集。 ここには物語の面白さの全てが凝縮されている。」 大絶賛されている「東京タワー」を以前から読もう読もうと思っていたが、なんとなく機会を逸していた。 そのうち 表題も魅力的で、もっと軽く読めそうな こっちを先に読もうかなと思い始めた。 |
| (’06/4) 過去に大衆誌に掲載された作品が収められた短編集。 表題になっている「ボロボロになった人へ」だけが書き下ろしだが、わずか5ページの短い作品であまり中身が無かった。 他の5作品もあまりコメントする気にならないレベルのもの。 この本は本屋に結構積んであるのだが、「東京タワー」人気にあやかって増刷されただけものに違いない。 それ以上のものでは決して無い。 「帯に書かれていることは信用ならん」とは思っていたが、これほどデタラメが書かれた帯は初めてかもしれない。 この6作品は 「刺激的」 かもしれないが、 「誠実」 でもなければ 「魅力的」 でもなく 「笑え」 なければ 「感動」 も出来ない。 ★ |
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「恋愛中毒」 山本 文緒 文庫本 「もう神様にお願いするのはやめよう。 どうかどうか私。これから先の人生、他人を愛し過ぎないように。他人を愛するくらいなら自分自身を愛するように。 哀しい祈りを貫こうとする彼女の心に強引に踏み込んできた男。 世界の一部に過ぎないはずの恋が私の全てをしばりつけるのはどうしてなんだろう」 山本文緒作品4冊目 400ページを超える長編 |
| (’06/4) 水無月が以前から憧れていた小説家が偶然バイト先の弁当屋に買い物に来た。 近くに住んでいることを知り散歩がてら行ってみると家の窓から声をかけられた。 それをきっかけに、一緒に食事をし、ホテルへ行き、アシスタントとして雇われ、数多くいる愛人の一人になった。 物語の語り手がいつの間にか入れ替わっているという変わった構成。 元夫を忘れられず、それでも小説家との恋にのめりこみ、愛人の一人という極めて不安定な立場に強く依存していく。 長い物語の中で形成されていった主人公水無月のイメージを大きく覆す衝撃のラストを迎える。 良く考えると今まで読んできた彼女の作品は どれも人間の汚い部分をえぐった、ダークな内容がテーマにされてきた。 そういう意味では山本文緒ワールドの最右翼ともいえるかもしれない。 ★★ |
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「ブラック・ティー」 山本 文緒 文庫本 「胸に手を当てれば思い当たる軽犯罪...誰だって純真でもなく善良でもないが ただ懸命に生きるだけ。 人のいじらしさ、かわいらしさをあざやかに浮き彫りにする、心洗われる物語の贈り物。」 山本文緒作品3冊目。 10編が収められた短編集。 |
| (’06/4) 「電車の窓に映る私はどこから見ても会社帰りのOLだ。 けれど私は山手線が一周しても電車を降りない。 1日最低2周、多くて6周する。 それが私の仕事なのだ」 網棚に忘れられた荷物を持ち帰る「仕事」で生計が立てられる事を知ってしまった女。 「女にとっての本当の絶頂はベッドの中には無い。それは大勢の人の中で主人公になれる時に訪れる」 結婚式場で呼んでもいない元カレの姿を見つけ、絶頂からどん底に突き落とされた新婦。 「守って守って守り通した恋に終りが訪れた。それは本当に大きな驚きだった。皮肉な事に始めて彼と寝た時に感じた驚きに良く似ていた。天地がひっくり返るような驚きだった」 いつか必ず壊れる関係と言われるのがこわくて不倫の恋を誰にも言わずに7年守り通した女。 「ウメ様」の追っかけのために家財を売り 娘の貯金さえ下ろした母...元カノの留守番電話を外から暗号操作で盗み聞きし消去までする男... どうしてもガマンできなくて立ちションした所を彼女に見られて罵倒される男...いじめられている姉を助けるために猫を誘拐してきた弟... 自分は短編よりも長編が好きだ。 長編の方が心に残る。 短編はインパクトが薄いものが多いのだ。 しかしこれは大変良かった。 どれもインパクトが強い物語で 短編にしておくのがもったいない、このまま長編として続いて欲しいと思うものばかりだった。 この短編集は山本文緒の才能を改めて確認するものとなった。 ★★★★ |
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「男は敵、女はもっと敵」 山本 幸久 才色兼備、Aクラスの女、高坂藍子、36歳 「切羽つまってる?で、なに、可哀想?あたしが?」 藍子、元夫、不倫相手、その妻、その息子...台風の目のような一人の女をめぐる、普通すぎる人々。著者新境地の連作集 自分は沢山の本を読んでいるが、過去に「連作集」というものを読んだことが無い。 この中には6つのストーリーが収められている。タイトルは 「敵の女」 「Aクラスの女」 「本気の女」 「都合のいい女」 「昔の女」 「不適の女」 なんだか「ココリコミラクルタイプ」みたいだな。 おもしろそうだ。読んでみよう。 |
| (’06/3) 連作というから、一人の主人公の6つの違うストーリーなのかと思った。 しかしそうではなく、 始めのストーリーで脇役として登場する人が、次のストーリーの主役になっている。そこで登場した人がまた次の主人公...という構成だった。 全てのストーリーで主人公が変わるのだが、どの話にも必ず「高坂藍子」が絡んでいて、他の登場人物達も複雑にどこかで繋がっている。 一つ一つの話に特別大きなインパクトは無いのだが、この複雑な人間関係が面白く、夢中になって読んだ。 「必死の形相? 嘆願? 切羽詰ってる? で、なに、可哀想? あたしが?」 帯に書かれている言葉は単なるイメージで、本文の中には出てこないものだったり、ストーリーに関係ないものだったりする事があるが、 このセリフはちゃんと本文の始めのほうに出てきた。 そして第2話にも同じセリフが 「・・・(同文)・・・可哀想? あの人が?」 という形で出てきて嬉しくなった。 自分は本を買うとき必ずカバーをかけてもらう。 そして読み終わってからカバーを外す、という習慣がある。 コレを買ったときに著者の名前は見ていたはずだが、全然意識していなかった。 そして読み終わってカバーを外して気付いた。 著者は男だったんだ...。 読んでる間 ずーっと著者は女だと思ってた。 男かぁ 余計に感心するなぁ...。 愛すべき登場人物たち、フッっと笑ってしまう表現の絶妙さ、心地よいテンポ、連作集としての完成度と構成の面白さ、がとても気に入った。 ★★★★★ |
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「忘れないと誓った僕がいた」 平山 瑞穂 「例え世界中の誰もが君を忘れてしまっても僕だけは君を覚えてる」 「僕の心を一瞬にして奪い去った君。大好きで仕方なかったのに、今僕は君の顔さえ思い出せない...君は本当に存在したの?」 「時の裂け目に消えゆく少女と、避けられない運命を変えようと必死にもがく少年の恋を描いた、激しく切ない恋愛小説」 |
| (’06/3) 「この数分の映像に映っているのが あずさであることを僕は知っている。 そして撮影しているのが僕である事も知っている。 あずさにについて知っている事を言えといわれれば いくらでも言える。 でもそれらの事は知識として知っているというだけ。 」 タカシは同じ高校の生徒であるあずさに一目ぼれした。 しかし次第に周辺の人々の彼女に対する態度がおかしい事に気付いた。 あずさと授業を抜け出し遊園地に行った。 でもふと気付いたらタカシは一人でポツンとベンチに座っていた。 居眠りしてしまい、怒って一人で帰ったのか? そんな事をしそうな子には見えない。 次第にタカシは本当に二人で遊園地に来たのか自信がなくなってきた。 始めに結末を書き、それからその行程を回顧録のような形で説明していく展開。 映画でも時々あるけど結構珍しい構成。非現実的なストーリーではあるが、意外と入り込んだ。 残念なのは、固有名を「A町」 とか 「T川」 とか 「B駅」 という風に記述するところだ。 たったこれだけのことが感情移入の邪魔をする。 自分がそこにいるかのように入り込むから感動したりドキドキしたりできるのだが、 「S通り」とかを見る度に 現実の世界に引き戻されるのだ。 ★★★ |
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「エコノミカル・パレス」 角田 光代 文庫本 「34歳フリーター、年下の同棲相手は失業中。 どんづまりの生活を変えたのは二十歳の男からかかってきた「テキ電」。私はちゃちな恋をした」 角田光代作品2冊目。 前回読んだのはミステリー色あふれる作品だったが、今回はおそらく彼女らしい作風と思われる日常描写の小説を。 |
| (’06/3) 同棲している失業中の彼氏は私がバイトから帰る頃に必ず電話をよこして夕食とビールの買い出しを頼む。なかなか次の仕事を見つけないどころか 失業保険を受けるために必要な職安の面接をもすっぽかした。 公共料金も払えない極貧生活の中、海外旅行の時に知り合った男が突然彼女同伴で転がり込み住み着いた。 エアコンが壊れたワンルームで3人を養う毎日。 ある日知らない男から番号非通知の「テキ電」がかかってきた。 「今から行くから待ってて」 の言葉に 「バカバカしい」を繰り返しながらも1時間もコンビニの中で待っている自分がいた。 結局来なかったテキ電男に未練が残り、たまたまバイト先に面接に来た20歳の男に もしかしたらこの人があの時のテキ電男だったのかもしれないと根拠の無い思いを抱き、テキ電を装って電話をかけた。 私は彼に会いたかった。 彼に抱いて欲しかった。 「私」のお人よし、彼氏と居候2人のダメさ加減が状況の悲惨さを更に強調する。 理不尽な極貧生活は読んでいても笑うしかないほど空しさが満開。 メールを打ってもなかなか送信ボタンが押せない...何度も読み返してはポケットにしまい、また読み返しては言い回しをちょっと変えてみる... 34歳の「私」が20歳の男に抱いた「恋」とはいえないような淡い想いと結末に 正直かなり「キュン」となった。 今まで結論の見えない終り方をする小説はいくらでもあったが、これの終り方はビックリした。 ナイフでスパッと切り落としたかのような、これ絶対話の途中だろ!って終り方。 意図が分からない。 この先をどう想像して欲しいのか。 多少なりともまとめてくれれば、もうちょっと高い評価をしたいんだけど。 俺の「読み」が浅いんだろうか...。 ★★★ |
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「パイナップルの彼方」 山本 文緒 文庫本 「あなたの周りにもあるような日常を絶妙な人物造形で繊細に描く、驚くほど新鮮なOL物語」 山本文緒作品2冊目。 「ブルーもしくはブルー」のデキが大変良かったため、他の作品も読んでみたいと思っていたのだ。 |
| (’06/3) 信用金庫に勤める鈴木深文(みふみ)は先輩サユリと後輩弓子との間で、どちらともうまくやっていた。 しかしサユリからは弓子のグチ、弓子からはサユリのグチ を聞く役になってから徐々に穏やかだった日常に波が立ってきた。 サユリの住まいは彼女の収入では到底家賃を払えないであろう豪華な賃貸マンションだった。こっそり風呂場を覗いたら干してあった洗濯物の中に派手な男物の下着があった。 イラストのアルバイトもしている深文は 会社の備品であるペンや消しゴムを失敬しようとしているところを後輩弓子に見られた。 事件はそこから始まった。 扱いにくい先輩サユリ、今時の若い後輩弓子、幸せな家庭を築いているかのように見えるなつ美、現実がいやでハワイに逃亡した月子、 地方に転勤になった恋人天堂、妻帯者だがいつも口説いてきてキスしてくる上司岡崎...彼らが遭遇する悩みや葛藤に巻き込まれていく主人公。 例えば ラストは印象的なのだが、そこに至る過程でダルな部分が多い作品というのが結構ある。 平凡すぎる日常の描写が長くて 「この部分は飛ばしても関係ないかも」と思わせてしまうのだ。そうなると「早く続きが読みたい」とか「もうちょっと読んでいたい」とは思わない。 でもこの作品にはそういったダルな部分は皆無だった。 だから一気に読んでしまった。 さすがに「ブルーもしくはブルー」ほどのインパクトは無かったが、 ミステリーのような緊迫したシーンや、絶えず動いている人間関係、感情描写が飽きさせない。 どんどん読み進めたくなってしまうのは彼女の才能によるものなんだろう。 ★★★ |
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「真夜中の五分前 Side−A」 本多 孝好 「五分ずれた世界...学生時代に交通事故で失った恋人の習慣だった五分遅れの目覚まし時計を今でも使っている。 その五分ぶん、僕は社会や他人とズレて生きているようだ」 「かりそめの愛は惑う。 限りなく美しい物語をあなたはまだ知らない」 本多孝好作品2冊目。同タイトルのSide−Bというのがある。 2冊一ぺんに買おうとしたのだが、つまらなかったら困るから1冊だけにしておいた。 彼の作品なのだからおそらくつまらないって事は無いだろうけど。(過去に1冊しか読んでないけど) |
| (’06/3) 「祥子と別れた。 好きになって、付き合って、別れた。 恋人達の成り行きと終わりにはそんなに豊富なバリエーションがあるわけではない。 ただそこに予定と違う事があったとすれば、その別れが祥子から切り出されたということだろう」 会社内での派閥争い、 恋人との別れ...そしてかすみと出会った...。 かすみは双子の姉であり、双子にしかわからない深刻な悩みを抱えていた。 僕はかすみのために「恋人のフリ」を続けるのも悪くないと考えた...。 こびない、いいカッコをしない、自分を売り込まない、自分の首をどうにでも出来る上司に対してすら本音でぶつかる。 でも決してアツい男ではない。 クールで冷静。 自分はまずその主人公のキャラクターにほれた。 彼を見ていたい。 彼のストーリーをこのまま読んでいたい。 あまり経験の無い感覚だ。 ページが終わりに近づいてくにしたがって このままの展開では話が終わらないんじゃないか?という不安にかられてきた。 予想通り、話の中で重要な位置を占めていた「派閥争い」が、結論を見ずに、そして一番重要な「僕」と「かすみ」の事もなんともいえない微妙な終わり方をした。 「Side−B」 の表紙には「Side−A」から2年後と書かれていたと思う。 だから「Side−A」はそれだけでひとまず完結するのだと思っていた。 しかしこの終わり方をどう理解しようか...結局「Side−B」を読む事になるんだろうな。 しょうがない。 しかし「五分ずれた目覚まし時計」というのは話の中に登場する単なるアイテムに過ぎず、話の本質には全然関係なかった。それがハズされた気分だった。 このストーリーが「限りなく美しい物語」とも思わない。 帯に書かれているのはコピーライターが自分のコピーに酔ってるだけのものだな。 ★★ |
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「あの日にドライブ」 荻原 浩 「人生、今からでも車線変更は可能だろうか...元銀行員のタクシー運転手は、自分が選ばなかった道を見てやろうと決心した」 映画化が決定した 「明日の記憶」 の著者の最新作 人生の車線変更、選ばなかった道...おそらく誰もが考えた事があるテーマ。 違う人生もあったかもしれないという 彼の作品が映画化されるというのだから、いい作品を書く人なのだろう。でもその「明日の記憶」よりも、こちらの作品のテーマのほうが興味を惹いた。 |
| (’06/2) エリート銀行マンだった伸郎は 上司に対する一言が原因で左遷され辞職した。 一時的な仕事としてタクシー乗務員になった。 あくまで一時的、仮の姿だ...。 妻の律子はお茶で口をゆすぎ、娘の朋美は父に向かって臭いといい、息子の恵太は四六時中ゲームばかりやっている。 学生の頃に思い描いていた未来の自分はこんなんじゃなかった。 夢だった編集者になり、恋人である恵美と結婚し、幸せな家庭を築き...。 恵美が離婚したらしいという話を聞いた伸郎の妄想は加速した。 もし編集者になる夢を捨てていなかったら...もし恵美と結婚していたら...。 恵美の姿を一目みたい。 20年も経っているのだからすっかり変わり果てているに違いない。 あの頃の魅力はすっかり影を潜めているに違いない。 そうであってほしい...一目見るだけ...そうしたら自分の妄想にピリオドを打てる...諦められる...。 仕事にも家庭にも幻滅して、可能性があった「今とは違う人生」に憧れを持つ主人公が、徐々に現状を受け入れ平凡でささいな幸せを見出していく、 その悲観から立ち直って前向きになっていく過程を描いたストーリー。 あまり動きが無いままページの8割くらいまで進む。 憧れていた恵美の思いもよらない行動を目撃し、彼の妄想が崩れ去るシーンは切なく、 銀行時代の最低な上司と再会して思う存分言いたい事を言ってやるシーンは痛快ではあるが、ちょっとドラマ仕立てっぽい。 主人公が徐々に前向きになっていく部分は 自分も同じような姿勢を持ちたいと素直に思ったし参考になったのだが、 作品全体としては想像していたような内容ではなかった。あまり話が展開しないもどかしさもあり、読み進んでいるときのワクワク感は少なく、物足りない感は残った。 ★★ |
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「クワイエットルームにようこそ」 松尾スズキ 「目が覚めて私は いるはずのない場所にいて...。 閉鎖病棟の中で繰り広げられる絶望と再生の14日間」 松尾スズキの作品は文庫本のエッセイ集で 「大人失格」 と 「この日本人に学びたい」 の2冊を読んでいる。 どちらも非常にバカバカしく、ぬるーいエッセイで、何も考えずに読めるのが結構気に入っていた。 この作品はネット上で知って、結構面白いという評価だったので読んでみようと思った。 彼はちゃんとした真面目な小説も書くんだ。 知らなかった。 |
| (’06/2) 気がついたらベットで手足を縛られていた。 何が起こった? 答えはすぐに出た。 ここは病院。 そして自分は重篤な状態でしかるべき処置をされたのだ。 私は昨日、鉄ちゃんと激しい喧嘩をして頭がパンクし、精神安定剤をつまみに酒を飲んだのだ。 オーバードーズ。 頭を上げたら窓からお化けがこちらを見てる。 幻覚か? 私はあらん限りのシリアスを体内から総動員させて絶叫した。 すいませーん! 恐怖で絶叫したのに『すいませーん』って...シリアスとは意外とそういう手近なものだ。」 閉鎖病棟における 非日常な人たちとの非日常的な生活を描いた物語。 超個性的な登場人物とあちこちに散りばめられた笑い。 「ちゃんとした真面目な小説」ではなかった。松尾スズキらしさ全開。 読み終わった後に何も残らないけど、バカバカしくてちょっと笑える小説を読みたい人にはオススメ。 好き嫌いははっきり別れるだろうが、個人的には結構楽しめた。 ラストは結構きれいで、そこがちょっと意外だった。 ★★★ |
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「おやすみ、こわい夢を見ないように」 角田 光代 「新婚夫婦、高校生カップル、同棲中の恋人たち− あなたの気持をざわざわさせる衝撃的な7つのドラマ」 「憎しみは愛の裏返しってこと? それとももっときまぐれなもの?」 「人を憎む気持は誰にでもあるはず。でも人を殺したいとまで思う強い気持は何だろう。人を殺すのは憎しみではない。もっと無知な麻痺した何かだ。」 非常に意味深なタイトルの短編集。 表紙は貼り絵調でほんわかしているが、よく見ると 空は灰色で、人が逆さで空中に浮いていたり、 川にはバスや家が水没しているし、首輪をした犬の脇には人の足が横たわっている。 この静かな不気味さがとても気になった。 角田光代の作品は多数並んでいて、他の作品のタイトルはどれも穏やかな感じだったのだが、これは異色作なのだろうか。 |
| (’06/2) ・「このバスはどこへ」 バスに乗ったくり子は、後部座席の会話が「これから人を殺しに行くんです」と聞こえた気がして眠気が吹き飛んだ。 そして考えた。自分には殺したい人はいるだろうか...いた。 20年前、小学生の自分に嫌がらせを繰り返した担任の教師だ。 くり子は既に老い衰えたであろうその元教師の所在を調べ、入院中らしい病院を訪れる事にした。 ・「スイートチリソース」 幼い頃に父を亡くしてから、母は食べ物に極端に潔癖になった。どうやら母は父が死んだ事を自分の栄養管理が悪かったからだと思い込んでるらしい。 しかし夫との日々繰り返される小競り合いの中で、母の豹変ぶりが違う原因によるものである事を理解した。 ・「おやすみ、こわい夢を見ないように」 別れた途端に学校中に悪い噂を流し露骨な落書きで嫌がらせをするようになった剛太を、沙織は「あいつぜってぇぶっころしてやる」と心に誓った。 引きこもりの弟である光と共に、剛太を一撃で倒すためのトレーニングが始まった。 ・「うつくしい娘」 「加代子さんの娘ならきっと綺麗で素直なお嬢さんなんでしょうね」と誰もが言う。 しかし加代子は子供の話題になるといつも早く違う話題になってほしいと念じる。 子供部屋にご飯が出来たと告げると「うるせぇんだよクソババァ」と返ってくる。 そんな滅多に部屋から出ない娘が、ある日珍しく居間に来て声をかけてきた。 ・「空を回る観覧車」 ボンゴレスパゲティを食べていてアサリの殻を噛み血の味が口内に広がった。これも不倫相手だったりり子が別れ際に言った「呪い」の一つなんだろうか。 最近視界の隅を度々横切るりり子に似た影がどこからかこちらを見ているような気がする。 ある日妻が遊園地で観覧車に乗ろうと言い出した。 ・「晴れた日に犬を乗せて」 誰もが僕の事をいい人だと思っている。 でも今週末に計画している事を実行した後でも みんな僕のことをいい人だと思い続けてくれるのだろうか。 ある日典行は、合鍵を使って元彼女のペットである子犬を無断で連れ出し、助手席に乗せ車を走らせた。 ・「私たちの逃亡」 小学生の頃、仲良しの理沙はいつも家族や同級生や近所のおばさんを罵っていた。 理沙に嫌われたくないから自分も一緒になって周りを罵倒していた。 中学生になり、理沙が引きこもりになっても度々訪問していたが、 高校に入ると私は新しい友達もでき、先の事を見始め、過去ばかり見ている理沙とは会わなくなった。 社会人になり、以前理沙が見せてくれた「殺したい人リスト」の筆頭に上がっていた里恵が事故で死んだニュースが飛び込んだ。 思っていたほどミステリーではなかった。 殺人や呪いなどの単語が出てくるが、実際にはそれらは起こらず、全て登場人物の空想で終わり、話は極めて現実的に展開する。 実際にそれらの事が起こればストーリーは更にスリリングになるのだろうが、非現実的、非科学的な事を持ち出してしまえば内容はどうにでもなるわけで、 あえてそのような安易な手法を用いず現実的に話をまとめる所が逆に好印象だった。 誰もが持っている葛藤、矛盾、精神的弱さ、心に思うだけで実行に移せない勇気の無さを描き、結論や結果を出さないまま、主人公のその後を想像させたまま終わっている。 それでも中途半端な感じは無く、なんとも言えない後味を残す。 新人作家の作品を読んだ直後だったせいか、すっと自然に入ってくる情景描写はさすが一日の長があると思った。 ★★★★ |
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「ナラタージュ」 島本 理生 帯寸評 「 『この恋愛小説がすごい! 2006年版』 第1位 」 「魂を焼き尽くすほどの恋。 封印したはずのあの痛みをよみがえらせてしまう小説」 「余分な説明は一切しません。ただ最初のページを開いてください。もうやめられなくなります。ホントすごい。」 おぉ、そんなにすごいのか、と 手に持って買おうとしていた本を戻してまでこれを買った。 非常に大きな期待感とともに読み始めた。 |
| (’06/2) 泉は高校の卒業式に憧れていた葉山先生とキスをした。 しかしそれから付き合うことはなかった。大学生になってから高校演劇部のOBとして演劇の手伝いをすることとなり、 顧問の葉山先生と再会。 2人は互いに惹かれ合いながらも近づいたり離れたりを繰り返す。 他の人と付き合いながらも葉山先生の事を忘れられない。 惹かれあっているのに結ばれないその不条理を描く。 このまま何事も無く終わってしまうのか?と思うほど、物語の大部分が比較的静かに進み、ラスト近くでいろいろな事が動き出す展開。 自分は絶えずしっくりしないものを感じながらこれを読み進めていた。 誰のセリフなのかわかりづらかったり、情景の描写の仕方が不自然に感じられたのだ。 全て読み終わってから知ったのだが、著者は22歳。 そんなに若かったんだ。 自分が感じた不自然さは熟成を待つべき部分なのかもしれない。 確かに22歳が書いたのだと考えるとスゴイと思った。 この小説でも頭に浮かんでくるのは「運命」という言葉。 運命に逆らう生き方をしていると、頭では理解できない、言葉では表現できない違和感を持ち続けるのかもしれない。 ★★ |
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「私という運命について」 白石一文 帯寸評 「人は本当に自らの意思で自分の人生を選び取る事ができるのだろうか。 恋愛、仕事、結婚、出産、家族、死... 大手企業に勤務するキャリア女性の29歳から40歳までの揺れる人生を描き、運命の不可思議をその根源的意味を鮮やかに描いた書き下ろし900枚」 白石一文作品4冊目。人間のダークな部分をえぐる事を得意とする彼が 女性主人公の作品を書くとは思わなかった。 そこからして新鮮で、強烈に読みたくなった。 迷うことなくスグ買った。 |
| (’06/1) 出会いと別れ、選択と後悔、そしてそれを運命として受け入れていく ある女性の10年を映画のように情景が浮かぶ描写、展開で描く。 「子を生み育て、この世界を存続させていくのは私達女性の仕事。子供を生まなくなったらこの世界は滅んでしまう。私達女性はその事に誇りと自信を持たなくてはなりません」 「選択しない事でしか本当に受け入れる事は出来ない」 「妻である私が『私だって』と言うしかなくなったらもう終わりだ」 「人間なんて自分の夢や希望を実現するのが一番の望みじゃなく、その夢を誰かに託す方がずっと満足できる。男の人って自分の人生より大切なものがある事に気付いてない」 印象深い言葉が数多く出てくる。 同時に著者は何故これほどまでに女性の深層を表現できるのだろうと感心した。 運命の人を取り逃がしてしまったと後悔する亜紀に対して まどかは「それだったら大丈夫。もしその人が運命の人なら 何があっても最後には必ず結ばれるはずだもの」。 我々はたやすく「運命」を口にするが、そこまで割り切って純粋に「運命」を信じる事が出来るだろうか。 逆にそこまで自信を持って運命という言葉を口に出来るだろうか。 毎日読むのが楽しみだった。 印象深くせつない作品。 ラストは涙してしまった。 ★★★★★ |
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「FINE DAYS」 本多 孝好 帯寸評 「20万部突破 編集部に感激のメール&レターが続々 読者絶賛の恋愛小説 女性読者からの圧倒的支持」 「別れはこんなに悲しいのにどうして人は出会うのか、そう思って泣きました...読後少し強くなれました」 「人の心というものに触れた気がした。心の奥底にある大切な気持を思い出し涙を流し...またこんな本に出会いたいです」 「まだドキドキしています。 私を包んだ余韻は すがすがしさも悲しみも大切な人を振り返る時間も含んだとても贅沢なものでした」 彼の作品がいくつか並んでいて、どれも興味を惹くものだった。 彼の作品の入門編として 軽い感じのタイトルと表紙のこれを読んでみようと思った。 4つの作品が収められた短編集。 表紙にも帯にもそれを記すものは無かったので、実は一編を読み終わるまで短編だとは知らなかった。 |
| (’06/1) ・「FINE DAYS」 誰もが見とれる美少女転校生が教師を殴った。 彼女の口から出た言葉は 「たたいた事を叱るよりも、階段から突き落としたり家に火をつけなかったことを褒めて欲しい」 そのうち彼女と深く関わっている人が次々死んでいるという噂が立ち始める。 さわやかなタイトルとは相容れないミステリー。 ・「イエスタデイズ」 1年前に家出した息子が、余命3ヶ月の父親に頼まれ、父の昔の恋人「澪緒」を探す。 彼は35年前と現代の「澪緒」に出会う。 父の選択は正しかったのか、父の生き様は尊敬できるものだったのか。 息子が父親の過去に触れ、自分もその切なさを体験するという物語。 ・「眠りのための静かな場所」 「人は死んだらお星様になるのよ」と母に教えられ、夜空を見上げられなくなった。星になった妹が見ている。「お姉ちゃん、楽しい?楽しいよね、私を殺してまで生き延びたんだから」 同じゼミの結城は自分と同じ陰を持っている。 彼には誰にもいえない秘密があるようだ。 「えぇ〜ここで終わるか普通!」と叫んでしまった、結末が謎に包まれたミステリー。 ・「シェード」 アンティークショップで見つけたランプシェード。彼女へのクリスマスプレゼントとして買いに行ったら既に売れてしまっていた。 店員の老婆が言うには あのランプシェードには特別な伝説があったという。 老婆が語り始めたその伝説を聞き、男は今の自分の恋愛との共通点を見出す。 表紙、タイトル、帯寸評のどれを見ても、こういう雰囲気の小説だとは思っても見なかった。 どの作品も恋愛小説という雰囲気ではない。 どちらかというとミステリーだ。 帯に書かれていた読者からの声などは、「本当にこの本に対する寸評なのか?」と疑いたくなるほど 雰囲気を異にするものだった。 しかしそれが期待外れだったかというと、そうではない。 むしろ期待よりも面白かったと言える。 印象に残ったのは「FINE〜」と「眠りの〜」。どちらもミステリー色の濃い作品だ。 ミステリー仕立ての恋愛小説が彼の真骨頂であるならば、今度は是非長編を読んでみたい。 ★★★ |
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「優しい音楽」 瀬尾まいこ 帯寸評 「家族、恋人達の心のふれあい。今絶大な支持を得ている作家の最新作」 「この作家の傑作率たるや素晴らしい。こういう作家がいる事に感謝したい」 「温かさ、優しさ、笑い、がゆっくり気持の中に入ってきた。 明るく軽そうでそのくせ奥のあるしっかりしまった3編」 平凡な日常の描写の中からなんとなく温かい気持ちにさせてくれる作品が読みたかった。 |
| (’06/1) ・「優しい音楽」 ある日突然駅で自分の前に立ちすくみ、ジッと顔を見つめてきた千波。 それ以来毎日彼女は駅で僕を探している。 最初は気味悪がっていたが、毎日会って話しているうちに次第に惹かれ、デートに誘ったら「毎日会ってるのに何故わざわざ日曜日に会うの?」という意外な返答。 話がかみ合わないからズバリ「付き合ってくれる?って聞いてるの!」 と言ったら 「恋人にならないと一緒にいてくれないの?」とこれまた意外な返答。 ・「タイムラグ」 不倫相手の男が奥さんと旅行に出るから子供を預かってくれと非常識な申し出をしてきた。 しょうがないからその子供と一緒に男のお金で豪遊することにした。 「豪遊...どこに行きたい?」の問いに、その子は「会った事が無いおじいちゃんの家」と答える。 不倫相手の子供を預かるだけでも非常識なのに、なんでおじいちゃんの家に行かなきゃならないんだ?...でも結局行く事になる。 ・「がらくた効果」 なんでも拾ってきてしまうクセのある同棲相手のはな子。 「また拾ってきちゃった」と見せたのは家具でもなく犬や猫でもなく、佐々木さんという50過ぎのおじさん。 あまりの驚きに怒ることも忘れて妙な質問ばかりしてしまう章太郎。 それから不思議な3人生活が始まった。 ゆったりとした雰囲気でストーリーが流れていくが、江國香織作品のような波風立たないまったり感覚とは違う。 「日常の中に起こった非日常」という感じ。 どれも温かな終わり方をする。 特に「がらくた効果」は面白かった。 インパクトは無いが、軽い感覚で読める作品。 今度は長編を読んでみたい。 ★★★ |
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「しあわせになるドーナツの秘密」 ボード・シェーファー 帯寸評 「最近自分を見失いがちと感じているあなたへ」 「自分の周りのもの全てに感謝したいと思える本」 「心の中にあったよどみが一気に体外に排出されていく爽快感を覚えた」 不思議なタイトルに惹かれた。外国文学は外される事が多いのだが、懲りずにまた読んでみた。 |
| (’06/1) 登場人物の女の子キラと愛犬マネーは 「イヌが教えるお金持ちになるための知恵」 に登場したコンビらしい。 ドイツ人のキラがアメリカに留学していろんな人と出会い、事件に巻き込まれていく中で、人生における大切な教訓を学んでいくというストーリー。 ストーリーが子供じみていること、出てくる教訓もなんとなく小学生への説教的で、うっとぉしい感じがした。 外国文学はやっぱり期待を外してくれる。 ゴースタイン・ヨルデルの作品以外に面白かったものに出会ったことが無い。 「12番目の天使」 「GoodLuck」 など、感動のベストセラーと呼ばれるものも読んだが全然良くなかった。 間に翻訳が入ると作者の意図が薄れるだろうし、難しい作品は翻訳自体も難しいだろうから、子供向けの簡単な内容の作品ばかり入ってくるものなのかもしれない。 ★ |
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「見えないドアと鶴の空」 白石一文 帯寸評 無し 「僕の中の〜」以来彼のほかの作品を読んでみたくて、「草にすわる」と一緒に購入 |
| (’05/12) 仕事をやめて「主夫」に専念する昂一と、妻であるキャリアウーマン絹子、その幼なじみで未婚の母由香里。 昂一が身寄りのいない由香里の出産に立ち会った事をきっかけに二人は親密になり、同時に由香里の持つ不思議な力を体験するようになる。 由香里の家族の死因や絹子と由香里の幼少時代の不思議な関係を調べていくうちに、昂一は自らの死を覚悟する出来事にあう。 自分が持つ不思議な力と、恋愛の邪魔をする死んだ父親の霊に悩まされる由香里は、徐々に解決の道を探り、平凡な幸せを見出していく。 彼の作品としては珍しく、非現実的なストーリーで、超能力や亡霊を扱っている。 雰囲気的には「僕の中の〜」に似ている。けど彼の作品には現実的な内容の方が似合うと思った。 相変わらず生々しい性描写が出てくるところが気に入らない。 ただ、彼の真骨頂である、生きるとはどういうことかを独自の視点で読者に問いかける手法は相変わらず冴え渡っている。 ★★★ |
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「草にすわる」 白石一文 帯寸評 「小説の大きな役割に挑む覚醒の物語二編」 白石一文のほかの作品が読んでみたくて買った。 「僕の中の〜」よりもファンタジックでソフトな内容なのではないかと期待した。 |
| (’05/12) ・「草にすわる」 主人公が読んだ 「私の間違いだった 私の間違いだった こうして草に座ればそれが分かる」という一編の詩がタイトルになっている。 売れない不動産を無理に売れと怒鳴られる毎日の中、先輩の自殺をきっかけに仕事をやめ、5年間何もしないと決めた浩治と、 有名大学、大手会社とエリートコースを歩んでいたが、海外出張中に家族全員を失った曜子の物語。 曜子の「ねぇ、死にましょうよ」の言葉を浩治は驚く事もなく受け入れ、一緒に睡眠薬を大量に飲む。 ・「砂の城」 自分の人生の失敗を文学作品に置き換えて暴露することにより数々の賞を受賞した60代の作家の物語。 精神病になって入院したまま8年間会っていない妻、覚せい剤事件を起こした息子、ライバルであり器用に生きるもう一人の作家との争いと確執と羨望... 不器用な自分の人生への後悔を感じながら、最後に彼は「自分の人生の終着駅」を発見する 2つの作品に共通するのは 上手く生きる事が出来ない主人公の葛藤と、真実も嘘もなく、あるのはそのままの自分、ということを認識する事によるあきらめと平穏。 相変わらずテーマはダークだが、彼の作品としてはちょっと異質なような気がする。もっと他を読まないと分からないが...。 白石一文の作品を読む入門編としてはここらあたりがいいのかもしれない。 ★★★ |
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「僕の中の壊れていない部分」 白石一文 帯寸評 「読者に新たな内面凝視を促す力作」 「これほど強く真正面から生きる事の意味を問いかける小説を読んだ事が無い」 自分好みの内容の深そうなタイトルと、それをイメージさせない意味不明な表紙の絵が気になって買った。帯寸評に書かれていた「内面凝視」という キーワードにも強く惹かれた。 |
| (’05/11) 20代後半の編集者とフィアンセを含む3人の女性との間で展開するストーリー。 主人公はおそろしく破壊的な思想の持ち主。しかし決して悲観的な人間ではなく、その破壊的な考えを自然に着こなしている。 彼の発言は ひどく頑固で冷徹で人間味が無いが、筋が通っていて、反論できない力があるため頻繁に人と対立し、人を傷つける。 結局フィアンセとはどうなっていくのか分からないままで終わるため、ストーリーとしては完結していないが、この作品の場合ストーリーの行方はあまり関係ない。 著者はおそらく仏教から強く影響を受けていると思われ、仏教的考えや引用が多く出てくる。 先ほど破壊的と書いたが、実は誰もが持っていて、しかし目をそむけている部分なのかもしれない。 ゆえに深く考えさせられる部分、共感できる部分が多くある。 3人の女性とのやたら生々しい性描写はこの物語には不要。そこが唯一残念に思った部分。 死ぬ理由など無いのに「自分は何故自殺しないのか」という突拍子も無い自問自答や「自分には他人と生きる資格も無ければ能力も欠落している」という部分が印象に残る。 人間のダークな部分をえぐる奥深く破壊的な人生観を読む事によって、「じゃあ自分はどうなのか」を考えさせられるお勧め作品。 ★★★★ |
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「ブルーもしくはブルー」 山本文緒 文庫本 タイツーリングに行く際、飛行機の中で読もうと思い文庫本を買った。 |
| (’05/10) 「私には男性を見る目がないらしい」 で始まる文章にいきなり引き込まれていった。 不器用でやんちゃ坊主のような板前職人河見の求婚を断り、スラリとしたセンスのいいエリートサラリーマン佐々木と結婚した蒼子。 金銭的に不自由は無いものの、夫との会話も無いような生活。 「もしあの時河見と結婚していたら...」 考えてはいけない「もし」 ありえない「もし」 が 現実になってしまうという物語。 これは面白かった。 誰もが抱いてしまう妄想に鋭く切り込み、妄想は妄想でしかないのだと教えてくれる作品。 彼女の著書は是非他にも読んでみたい。 ★★★★★ |
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「大人失格」 松尾スズキ 文庫本 タイツーリングの時に、真剣に読む小説と さらっと読めるエッセイの2冊を買おうと思った。 前者として「ブルーもしくはブルー」を選び、 後者としてコレを買った。 |
| (’05/10) 「何がカッコ悪いといって、腹が減る事ほどカッコ悪いものは無い。 料理が運ばれてくるのをじっと待ってる図も『お腹ペコペコでーす』という感じがしてどうも耐え難い。 だから食事の最中でも本を広げている。『飯を食いに来たのではない。読書に夢中になっているうちに、いつのまにか飯が目の前にあった。で、邪魔だから片付けているのだ』 といった風情でだ。 本を忘れて定食屋なんかに入った日には、照れくさいのと退屈なのとで、財布の中の領収書まで読む始末となる。」 とまぁ、こういった雰囲気のエッセイ。 あまりのバカバカしさに笑ってしまう部分も多くて楽しめた。 何も考えずに読める本としては最適。 ★★ |
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